2020-08-07
これまでの人生を振り返り、最期をどのように過ごすかについて考え、そこに向けて様々な準備をする活動を「終活」といいます。その終活を進めていく中で、ご自身の死後に備えて「エンディングノート」や「遺言書」を書いておこうと考えておられる方もいらっしゃると思います。しかし、エンディングノートや遺言書には、どういった特徴があり、両者にどのような違いがあるのでしょうか。
そこで今回は、エンディングノートと遺言書の特徴と両者の違いについてご紹介します。
まず、エンディングノートと遺言書のそれぞれの特徴について見ていきましょう。
エンディングノートは、万が一のことがあった時に備え、ご家族や周囲の方に知らせておきたいことや葬儀で希望することなどを書き記しておくためのもので、書く内容や書式などを自身で自由に決めることができます。最近では、書店に穴埋め式になっているエンディングノートなど、多種多様なものが市販されていますので、容易にエンディングノートを作成できます。
一方、遺言書は、民法で定められた自身の死後の遺産の分け方などの最後の意思表示する書面になります。法律に基づくため、決められた形式に従わなければなりません。また、遺言書を自分勝手に書いてしまうと法的拘束力がなくなり、せっかく書いた遺言書が無効になることがあるので注意しましょう。
エンティングノートと遺言書は、ご自身が亡くなった後の様々な心配事を解消することができると同時に、遺されたご家族のご負担を減らすことができるという共通点があります。しかし、エンティングノートと遺言書には「法的拘束力」「内容」「書式」「開封のタイミング」の4つの違いがあります。
エンディングノートと遺言書の最大の違いは、法的拘束力の有無になります。
エンディングノートは、作成の仕方にもよりますが基本的に法的拘束力はありません。ご自身が亡くなった後の様々な手続きをご遺族に「お願い」することはできますが、それを「強制」することはできないのです。
一方、遺言書は、法律に基づいた形式で作成するため法的拘束力があり、相続財産の分割などについての内容に「強制力」があります。そのため、ご遺族は遺言書に書かれている内容を基本的に実行しなければなりません。
エンディングノートと遺言書に記載できる内容にも違いがあります。
エンディングノートは、ご自身の死後のこと以外にも、万が一の病気の際の治療方針や意識が無くなってしまった際の延命治療のことなど生前の希望についても記載することができます。その他にも、ご自身のプロフィールや友人・知人関係のこと、ご葬儀の要望、家族への感謝の気持ちなどを自由に書くことができます。
一方、遺言書は、家族への感謝の気持ちを記載することはできますが、相続財産について記載しなければ遺言書としての効力を有しません。具体的には、相続財産の内容、分割率や分割方法などを所定の形式にしたがって記載しなければなりません。
エンディングノートと遺言書には書式にも違いがあります。
エンディングノートには、定められた書式はありません。そのため、自身が気に入っているノートや市販のエンディングノート、パソコンやスマートフォンのアプリなどでも作成することができます。
一方、遺言書は、民法上で定められた書式で記載しなければ、法的拘束力が無効になってしまいます。遺言書には、「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2通りの形式がありますが、「特別方式遺言」は事故や人事災害などで危機が迫っている際に利用できる形式になり、ほとんどの場合は「普通方式遺言」を使うことになります。そのため、以下で「普通方式遺言」に分類される3つの方式の遺言についてまとめさせていただきます。
1. 自筆証書遺言
遺言者がペンと紙を使用して全文を自筆(代筆は不可)で書いた遺言書のことをいいます。遺言全文・氏名・日付を遺言者が自筆して押印することで、遺言としての効力が認められます。
2. 公正証書遺言
2人の承認の立会いのもと、公証人が遺言者から遺言の内容を聴き取りながら作成してもらう遺言書のことをいいます。専門家のもとで相続人とその都度確認をとりながら作成するため、確実に遺言の内容を実現できる形式であるといえます。
3. 秘密証書遺言
自筆証書遺言を2人の証人と同行して公証役場に持っていき、公証人に正式な遺言書であることを証明してもらう遺言書のことをいいます。証人と公証人には遺言書の内容を公開せず、遺言書があるという事実だけを確実にするのが目的となります。
エンディングノートと遺言書には開封のタイミングにも違いがあります。
エンディングノートは、ご自身がご存命の時でも確認ができ、ご家族もいつでもエンディングノートの内容を確認することができます。そのため、ご希望をすぐに知ることができますし、ご自身が意識不明になってしまったとしてもご家族は内容を知れるため、ご家族としてもとても助かると思います。
一方、遺言書は、ご家族は故人様の生前に遺言書の内容を確認することができません。遺言書の内容は、家庭裁判所の検認を受けた後、相続人全員の前で開封します。勝手に遺言書を開封すると、過料を科されてしまう可能性があるので注意しましょう。
エンディングノート | 遺言書 | |
---|---|---|
法的拘束力 | なし | あり |
記載内容の違い |
|
|
書式の違い | 決まった書式はなく、自由に書くことができる |
民法上で規定された書式がある
|
開封のタイミング | 自由に開封できる | 自由に開封できない |
遺言書はエンディングノートとは違い、書き遺せる内容に制限があります。そのため、遺言書だけでは伝えきれない事項や気持ちをエンディングノートに書くというように、両方を活用するのをおすすめします。エンディングノートや遺言書を書くことは、自身だけではなく遺されたご家族の不安の解消にもつながりますので、早いうちから少しずつ筆を進めてみてもよいでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
どのようなご葬儀にするかは、故人様とご遺族の希望に沿って決定しますが、両者の意向が一致しないこともあります。例えば、故人様は家族だけでご葬儀を執り行ってもらいたいと希望しているけど、ご遺族は、故人様の死を惜しむご親族や友人・知人など、できるだけ多くの人にお別れの機会を作りたいと思い、一般葬を希望する場合です。 そこで今回は、ご家庭によって事情も様々ありますが、故人様とご遺族のどちらのご希望を尊重すれば悔いの残らないご葬儀になるかを考えていきます。