2024-02-02
火葬大国である日本ですが、かつては「水葬」と呼ばれる方法が用いられていました。この方法であれば、故人様を海に還すことができますが、今の日本では例外を除いて水葬は認められていません。
本記事では、日本や他国で行われている水葬について詳しく解説します。近年注目を集めている「海洋散骨」についても触れていますので、ぜひ参考になさってください。
水葬とは、故人様のご遺体を海や川などに沈める葬法の一種です。この方法には、故人様の魂を海のかなたにあると信じられていた「常世の国」に送るという意味合いがあるといわれています。
かつての日本にも水葬が行われていた時期がありましたが、現在では違法行為にあたるため、例外的にしか行われていません。日本だけではなく、世界的に見ても水葬が行われている国は少ないことから、今となっては珍しい葬法といえます。
水葬には「舟葬(しゅうそう)」と「海葬(かいそう)」の2種類があったといわれています。以下では、それぞれの特徴について解説していきますので、基礎知識として覚えておきましょう。
舟葬とは、故人様を小さな舟に乗せて海に流す葬法です。この方法はインドのガンジス川流域やヨーロッパの一部地域で用いられていました。船体を棺として流したり、船をかたどったものをご遺体とともに流したりと、宗教や地域によってやり方に違いが見られるのも特徴です。
海葬とは、ご遺体をそのまま海や川に流すという葬法です。先ほどご紹介した舟葬との違いについては、船の使用の有無が挙げられます。自然葬の一つに、ご遺骨を海に散骨する「海洋散骨」がありますが、現代における海葬はこの方法を指すこともあります。
古くより日本には「海の先に死者の国がある」という思想があったため、葬法として水葬が用いられていました。国内各地で見られる「精霊流し」や「灯籠流し」といった風習は、かつて行われていた水葬の名残ともいわれています。
しかし、現在の日本では例外を除いて水葬は行われていません。その理由や例外的なケースについては、以下で詳しく解説します。
今の日本において水葬は、刑法190条の「死体遺棄罪」に該当するため、原則としてご遺体を海や川に流すことはできません。
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
引用:e-Gov法令検索
仮に水葬を行った場合には刑罰を受けることになりますから、故人様の要望であっても行ってはなりません。なお、ご遺体を火葬せずに土に埋める「土葬」は違法ではありませんが、ほとんどの自治体が条例によって禁止しています。
今の日本では水葬が禁止されていますが、例外的に認められるケースもあります。それは航海中の船内にいる方が亡くなり、ご遺体を保管できない場合です。
さらに「死亡後24時間を経過している」「遺体が浮き上がらないための処置をする」といった条件も満たさなくてはなりません。他にも厳しい条件が設けられていますので、基本的には希望してできるものではないことを覚えておきましょう。
現在の日本において水葬はないものに等しいですが、ほかの国では選択肢の一つになっているところもあります。それでは、世界各地で行われている水葬について詳しく見ていきましょう。
インドは人口の約80%がヒンズー教といわれており、ガンジス川の岸辺で火葬を行った後、河川に散骨するスタイルが主流です。日本では火葬後に墓地へ埋葬するという方法が根付いていますが、インドでは火葬後に散骨の水葬を行うのが一般的となっています。
なお、貧困問題を抱えるインドでは、火葬費用が払えない方も少なくありません。そのような背景もあり、妊婦や乳児、蛇の毒で亡くなった方などは火葬を行わずに川へ流すこともあるようです。
インドほど一般的ではありませんが、チベットでも水葬が行われています。この国における水葬は、経済的に恵まれない方や伝染病で亡くなった方に対して行われるのが一般的です。
チベットでは火葬を行わず、ご遺体の一部またはそのままの状態で川に流します。水葬以外にも塔葬・火葬・土葬といった方法が用いられており、近くに海がない地域ではご遺体をハゲワシなどの鳥に食べさせて供養する鳥葬を行うのが通例です。
アメリカでは土葬や火葬が主流ですが、第三の選択肢として水葬が注目されています。アメリカにおける水葬はほかの国とは異なり、アルカリ加水分解でご遺体の処理を行うのが一般的です。
このアルカリ加水分解葬は「コストが低い」「環境への負担が少ない」「大きな墓地を必要としない」という理由から、今後も広がりを見せることが予想されます。
スウェーデンやノルウェーでも、水葬の一種である舟葬が行われてきました。しかし、近年では衛生上の問題などから、一部の地域を除いては水葬が用いられなくなっています。
前述のとおり、日本では水葬が原則として禁止されていますが、海洋散骨で故人様を海に還すことは認められています。海洋散骨とは、ご遺骨を海に散骨する自然葬の一種です。ご葬儀が終了した後、関係法令で定められた海域まで移動し、黙祷・散骨・献花といった儀式を執り行います。
海洋散骨を行う場合、地域住民や漁業者などに対する十分な配慮が求められるため、専門会社に依頼するのが一般的です。事業者によってサービス内容は異なりますが、ほかのご遺族も乗船する合同葬や、専門スタッフに委託する代行散骨 などが利用できます。
なお、海洋散骨にもメリット・デメリットがありますので、事前に確認しておくことが大切です。以下で詳しく解説していますので、そちらもぜひご参照ください。
海洋散骨の特筆すべきメリットとして、以下の3つのポイントが挙げられます。
●「海に還る」という理想を体現できる
●金銭面での負担が少ない
●お墓の管理の手間が減る
葬法が多様化している日本では「自然に還りたい」と希望する方もいらっしゃいます。その理想を体現できるのは、海洋散骨の大きなメリットといえるでしょう。
また、ご遺骨を海に散骨するのでお墓を作る必要がなく、ほかの葬法に比べてコストが低いというメリットもあります。さらにお墓の管理が不要であり、無縁墓になることがないため、海洋散骨を選択する方も少なくありません。追善供養の面でお墓を建てたい方も、ご遺骨の一部を散骨し、それ以外を納骨することもできますので安心です。
続いて、海洋散骨のデメリットを確認していきましょう。
●遵守すべき法律・条例が多い
●ご家族から理解を得られない場合がある
●お墓参りや献花が難しい(遺骨をすべて散骨する場合)
海洋散骨は、海岸から一定の距離以上離れた海域で行わなければなりません。そのほかにも、ご遺骨の粉砕や地域住民への配慮など、さまざまなルールが設けられています。さらに、一部の地域では独自のルールを定めており、注意すべきポイントが多いのはデメリットといえるでしょう。
また、海洋散骨は歴史が浅い葬法であるため、周囲からの理解を得られない場合もあります。そのため、海への散骨を検討している方は、事前にご家族としっかり話し合うことが大切です。
日本での水葬は原則禁止されており、基本的には希望してできるものではないため、「自然に還す」という思想を体現したいのであれば、ほかの葬法を検討しなければなりません。故人様やご遺族の希望により、海への散骨を行いたい場合は、合法的にできる海洋散骨を検討してみましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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