2020-04-08
お墓の名義人が亡くなった時に、そのお墓をどうするかということがしばしば問題としてあがります。日本では名義人の配偶者や長男がお墓を継ぐことが一般的でしたが、現在では、子どもがいない、お墓が遠くて管理が難しいなど複雑な問題を抱え、お墓の継承者がいないというケースも少なくありません。
そこで今回は、お墓の継承者の選び方や手続きの流れについてご紹介します。
お墓の名義人(使用権を持った人)が亡くなった場合、そのお墓は「祭祀財産」となるため、これを相続する「祭祀承継者」を決める必要があります。
祭祀財産には、墓地・墓石や仏壇・仏具など先祖を祀るための財産などがあり、家や土地の不動産、預貯金などの相続財産とは異なり、分割できるものではなく、継承者は祭祀承継者1人となります。そして、祭祀財産を継承すると、お墓やご遺骨に関する決定をする権利を持つ一方でお墓を維持する管理料の支払いなどの先祖を祀る義務も負うことになります。なお、祭祀財産は相続税がかかりません。
民法では、お墓などの祭祀承継者に関して次のように規定しています。
第897条(祭祀に関する権利の承継)
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
このように民法第897条では「被相続人の指定」があればそれに従い、指定された方が相続することとなります。なお、それで決まらない場合は「地域や一族の慣習」に従い、これでも決まらない場合は「家庭裁判所の調停か審判」となります。
このように、故人様が祭祀承継者を決めていた場合を除き、継承者が明確に誰でなければいけないという決まりはありません。そのため、亡くなられた方(被相続人)の親や兄弟姉妹、他家に嫁いだ娘、甥、姪、血のつながりがない姻族など、誰でも継承者となります。
ちなみに、霊園の使用規約の中には、墓地使用権の継承に「原則3親等まで」「原則、所有者の親族であること」といった条件がある場合もあります。親族でない人を継承者に選ぶ場合には、継承者の決定をする前に、お墓がある墓地の使用規則を確認するか、直接墓地に問い合わせをしましょう。
前項では祭祀承継者の選び方について紹介しましたらが、祭祀承継した際の役割とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。以下に、具体的な役割3つをまとめましたので、ご参照ください。
親族や友人が、命日やお盆にお参りできるように、お墓を維持管理します。霊園では維持管理費を、寺院墓地ではさらにお布施を支払います。その他にもお墓を継承する手続きをするとお墓の管理費の請求が届きますので、必ず納めましょう。お墓の管理費が納められなかった場合、数年後にお墓は無縁墓となり、使用権を失うこともあります。
親族を集めて、一周忌や三回忌などの法要、お盆やお彼岸などの先祖供養の行事を主宰します。
お墓が寺院墓地の場合、一般的に檀家としてお墓を所有していることになります。そのため、祭祀承継者は、お墓の使用権だけでなく、檀家の務めも継承することになります。
祭祀承継者は、お墓と遺骨の所有権を持っているため、「納骨後の遺骨を分骨して兄弟の手元に置きたい」「お墓が遠方なので墓じまいをして近場の霊園に移したい」など希望があった時は、祭祀承継者の同意が必要となります。
祭祀承継者が決定したら、まず継承する墓地の菩提寺や管理者へ連絡をしましょう。 その後、名義変更の手続きをしますが、お墓の継承に必要な書類は、以下のとおりです。
・継承者の戸籍謄本や住民票
・継承者の実印と印鑑登録証明書
・墓地使用許可証や永代使用承諾証(墓地使用権を取得した際に発行された書類)
・旧墓地使用者の死亡が記載された戸籍謄本
・先代の遺言書
・親族の同意書
・家庭裁判所の審判書
なお、お墓の取り扱いは墓地管理者によって異なりますので、墓地管理者にどのような手続きや書類が必要かをあらかじめ確認しておきましょう。
お墓の継承の際に行う名義変更の手続きでは、必要書類の提出と手数料の支払いも行います。手数料の金額は、霊園によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
寺院墓地 | 檀家の務めも引き継ぐので、手数料とお布施を包む。 お布施の金額は、お付き合いによって異なるので、悩んだ時はお寺に問い合わせましょう。 |
---|---|
公営墓地 | 数百円~数千円くらいが多い。 |
民営墓地 | 霊園による。数千円~1万円以上。 |
近年の少子化に伴い、継承者不足が深刻となっています。そのため、ご家族が亡くなられてから慌てないためにも、お墓の継承に関するトラブルを回避するためにもご家族との話し合いで、誰が祭祀承継者となるかを決めておくことが大切です。どうしても祭祀承継者が決まらない時は、トラブルにならないようお墓の引っ越しや、処分をする墓じまいを検討するのもいいかもしれません。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
お墓の横に、平たい板石が建てられているのを見たことをある方も多いでしょうか。これは、墓誌(ぼし)といって、故人様の戒名や事績が彫られている石碑です。墓誌の存在は広く認知されていますが、どのような方が何のために建てるのか、また建てる必要があるものなのかなど、詳しい事情はあまり知られていません。 そこで当記事では、墓誌に刻まれている具体的な内容や、墓誌を建てる意味、費用相場などについて詳しく解説していきます。
お墓参りは、故人様の命日やお盆、お彼岸、仏事の際などに行われます。お墓参りで持って行くものといえば、お墓を掃除するための道具やお線香、着火ライター、お供え、それにお花です。 お墓に新たなお花が供えられると、雰囲気が一気に華やぎます。その様子はお墓に眠る御霊にとって良いご供養になる上、墓参りをした方々の心も癒やしてくれます。しかしながら、お花の選び方にはある程度定められたルールがあるのです。本記事では、お墓へ供えるのに適したお花、供え方のポイントをご説明していきます。
日本では火葬が主流ですが、宗教上の理由や故人様のご意向により、土葬を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。土葬を行うためには、自治体や墓地管理者の許可が必要なため、事前にルールを把握しておくことが重要です。