2024-02-09
三途(さんず)の川と聞けば、あの世へ旅立つ際に渡る川だと誰もが想像するでしょう。三途は、仏語で死者が行くべき3つの場所を指すと言われており、「餓鬼道」「地獄道」「畜生道」を示しているとされています。
このように、三途の文字一つにもさまざまな思いや考えが込められていますが、三途の川に由来する伝承は、仏教のみにとどまるものではありません。そこで当記事では、三途の川の持つ意味合いや世界で囁かれているさまざまな言い伝えなどを、詳しく解説していきます。
三途の川は、あの世とこの世を分ける境界線であると言われています。三途の川を渡り切ってしまえば、二度と現世に戻ることはできません。なお、三途の川は三本に別れており、生前の行いによってどの川を渡れるのかが決められます。
また、仏教では死者が三途の川を渡り切るまでに、四十九日の日数を費やすと考えられています。つまり、亡くなってから四十九日が過ぎた故人様は、無事に極楽浄土へ到着したとみなされるのです。
ご葬儀でよく耳にする「六文銭」は、戦国武将の真田家を表す家紋としても有名です。六文銭は死装束の一つである頭陀袋(ずだぶくろ)に、三途の川の渡し賃として入れられてきました。あの世の手前で三途の川を渡る際、渡し守の奪衣婆(だつえば)や懸衣翁(けんえおう)に、六文銭を差し出す必要があると考えられているためです。
しかしながら現代のご葬儀では、法律の観点から本物のお金を棺に入れることはできません。そのため、紙で銭形を作った紙銭を、副葬品として頭陀袋に入れることがほとんどとなっています。紙銭は火で炙られることで、現世から冥府へ送られるのです。
賽の河原は、三途の川の手前に位置しています。親よりも先に亡くなってしまった子どもは、悲しませた父母への罪滅ぼしとして、この河原で石を積み、塔を作らなければなりません。ただし、何度作っても積んだ石を鬼に崩されてしまうのです。そこへ地蔵菩薩が現れ、子どもを解放してくれるという言い伝えがあります。
三途の川の渡り方は、生前犯した罪の重さによって変わるという考え方が一般的です。善い行いをした方ほど簡単に川を渡河できるようになっており、悪人であればあるほど困難を極めます。
善人は、金銀七宝で作られた橋で楽に川を渡れます。また、軽い罪人は橋を渡れないものの、山水瀬(さんすいせ)と呼ばれる浅瀬を自力で渡れるようです。
しかし、重い罪を犯した方は川の下流に位置する強深瀬(ごうしんせ)、あるいは江深渕(こうしんえん)と呼ばれる難所を渡ることになります。波は山ほどの高さがあり、大きな岩も流れてくるため、罪人は途中で潰され死んでしまいます。ただし何度も生き返るので、川を渡り切るまではこの所業を繰り返すしかありません。
三途の川は、仏教世界の考え方が日本で伝播したものです。しかしながら、日本のみに伝えられたものではなく、世界各国でもそっくりな言い伝えがあります。ここでは、世界で語り継がれる代表的な三途の川を見ていきましょう。
エジプトでは、天空の入口にもナイル川があると伝えられています。ナイル川に到着すると、太陽神ラーの船に乗り込む必要があるのですが、その船へ乗るには「死者の書」に記された呪文を渡し守に伝えなければなりません。無事船に乗った方はオシリスの元へ向かい、その場で審判を受けるのだそうです。
ギリシャで言い伝えられているのは、現世と来世の境にある「ステュクス(憎悪)川」です。この川には「カローン」という年老いた渡し守がいます。その川を渡るには、カローンに1オロボスを渡す必要があるのです。そこでギリシャでは、古くから死者の口へ1オロボスを入れる風習があります。
古代インドの「ヴァイタラニー川」には、カミソリのような細い橋が架かっています。川の温度は熱く、その中には遺骨や髪、血などが流れており、周辺には腐臭が漂っているそうです。そのため、この川は地獄の入口であると伝えられています。
三途の川の夢は、深い暗示が隠されていることが多いとされています。吉夢なのか凶夢なのかは、夢を見ている間が良い気分だったのか、それとも悪寒がするような印象だったのかでも判断できるようです。
例えば、三途の川を自力で渡り切る夢は、これから訪れる困難を乗り越えようとしている暗示だと言われています。渡り切るということは、困難に立ち向かえる力があることにもなりますが、裏を返せば一人で何でも抱えてしまいがちになるという警告とも捉えられます。一人で無理をすることなく、周りの方へ相談を仰ぐことも視野に入れましょう。
また、三途の川を見ている夢は、日常の中に危険が潜んでいる警告夢の可能性が高いとも言われています。
当記事では、三途の川の持つ意味合いや世界で囁かれているさまざまな言い伝えなどをご紹介しました。三途の文字にはさまざまな思いや考えが込められており、三途の川に由来する伝承は仏教のみにとどまるものではありません。
本記事が知識の一つとして、また日頃の行いを振り返る良い機会となれば幸いです。
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