2023-07-14
ある日突然に不幸が訪れると、悲しんでいる時間も与えられることなく、さまざまな儀式の準備をしなければならない状況に置かれます。最初に行われるのは「通夜(つや)」ですが、本通夜、仮通夜のように通夜にも種類があり、それぞれ目的が違うことは世間でもあまり知られていません。
本記事では、よく耳にする通夜(本通夜)と仮通夜との違いや、覚えておきたいポイントを詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
仮通夜(かりつや)とは、故人様がお亡くなりになった日に、ご家族が故人様との時間を静かに過ごす夜を指します。仮通夜の場合、ご家族や関係性の近い親族以外の方は参加しないほか、宗教的な儀式も不要です。仮通夜は、あくまで故人様と近しい関係の方が、お別れを悼むための時間をゆっくりと過ごす大切な機会とされています。
仮通夜は、故人様がお亡くなりになった当日の夜に行われます。一方、本通夜はお亡くなりになった翌日以降の夜に行われます。
仮通夜では、弔問者も僧侶も呼ばず、ご親族のみで別れを悼むのが一般的です。これに対し、本通夜では親族以外の弔問者や僧侶を呼び、宗教的な儀式を執り行いますので、ご遺族にとって大変忙しい日になります。
故人様とご親族が落ち着いて一緒に過ごすことのできる仮通夜は、ご遺族・ご親族にとって故人様との「最期の大切な時間」であり、本通夜は弔問者の参列を伴った「ご葬儀前夜の儀式」なのです。
近年では、故人様のご遺体を病院から斎場へ直接運ぶという流れが増えています。この場合、故人様とご家族がゆっくり一夜を過ごすという機会が持てないため、仮通夜を飛ばしそのまま本通夜を行うという流れになります。また、通夜自体を行わず、ご葬儀だけを執り行う「一日葬」を選ぶ方も増えてきていることから、仮通夜の機会は減少傾向にあるといえるでしょう。
ただし、ご葬儀の予定日が友引とぶつかってしまったり、タイミングが合わずに式場がお休みだったりする場合は、急遽仮通夜が行われる可能性があります。
参列者への対応やさまざまな手続きが必要となる本通夜・ご葬儀では、ご家族は故人様とのお別れの時間を十分に取ることができません。そこで仮通夜では、故人様のそばへ寄り添って静かに過ごすことが重要視されています。
また、地域の風習によっては、灯明(とうみょう)や線香を一晩中絶やさないようにしながら故人様を見守るという「夜通し灯明」が行われることもあります。しかし、ご家族の高齢化が進んでいる現代では、昔のように故人様を一晩中見守ることが難しくなったため、行う機会は決して多くありません。また、状況に応じて長時間火を灯し続けることのできる巻き線香や、LED式のろうそくが用いられることもあるようです。
なお、集まる人数により軽いオードブルや食事が振る舞われることが一般的ですが、肉や魚を使用しない精進料理が用意される地域もあります。
仮通夜は、ご遺族やご親族のみ参列し行われるのが基本です。ご親族に関しては、3親等まで声をかけることが一般的とされていますが、自宅へ呼んでも負担がかからない範囲に住んでいる方へ留めておくのが良いでしょう。また、宿泊が必要な方を無理に呼ぶ必要もありませんが、本人が参列を希望している場合は固辞せずに招待しましょう。
ごく親しい間柄のみで執り行われる仮通夜ですが、守らなくてはいけないマナーが存在します。ご遺族へ失礼のないよう、以下のポイントを心に留めておくことが大切です。
仮通夜に際しての服装に厳密な決まりはありませんが、喪服の着用は控えましょう。仮通夜は身内だけが集まって静かに過ごすための場ですので、きっちりとした印象を与える喪服を着用してしまうと、周りが落ち着かない雰囲気になってしまいます。したがって、仮通夜では平服の着用がおすすめです。
男性はグレー・紺・ダークブラウンなど無地のスーツと白いワイシャツ、地味なネクタイを、また女性は落ち着いた色で無地のスーツやワンピース、カーディガンを着用します。デニムや毛皮、派手な柄のアクセサリーなどは避けるようにしましょう。
遠慮のない親しい方々だけで集まる仮通夜では、なるべく気を遣わせない配慮が大切です。そのため、香典はご葬儀や本通夜のタイミングでお渡しするのが良いでしょう。ただし、ご葬儀や本通夜に参列できないといった場合は、仮通夜で香典をお渡ししても問題ありません。
仮通夜では、できる限り失礼のないような言葉を選ぶことも重要です。お悔やみを伝える場合は、「死亡」など直接的な表現は避けるようにし、「生前」「逝去」という言葉を用います。
仮通夜は、大切な故人様とご家族が過ごすかけがえのない時間を共有するために行われます。だからこそ、ご遺族側も参列する側も基本的なマナーを守り、相手に対して失礼のない行動を取ることが大切になってきます。前もって知識をつけておけば、いざというときに心のゆとりが生まれ、故人様との大切な時間を過ごすことができるでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。