2021-08-05
葬儀社との打ち合わせをしたり、ご葬儀全般を取り仕切るまとめ役を担うのが「喪主」です。ご葬儀の進行の中には喪主にしかできないことが多くありますが、その中でも重要なことが挨拶になります。喪主の挨拶は、様々な場面で求められます。そのため、喪主はご会葬いただいた方々に失礼がないように言葉を選ばなくてはいけません。
そこで今回は、ご葬儀において喪主が挨拶を行うタイミングや押さえるポイント、文例などについてご紹介します。
ご葬儀において喪主が挨拶を行うタイミングは大きく分けて、「お通夜式の終わり(または通夜振る舞いの前)」「出棺」「精進落とし(お斎)」となります。以下では、それぞれのタイミングにおける挨拶に関して見ていきましょう。
なお、ご葬儀の流れに関しては地域や宗旨宗派、ご葬儀の形式によって異なります。そのため、挨拶をいつ・どのタイミングで行うのかは、葬儀社の担当者が教えてくれますので、ご心配な方は、事前に確認しておくとよいでしょう。
喪主によるお通夜式でのご挨拶は、お通夜式がひと通り終わった時、もしくは通夜振る舞いの前に行うのが一般的になります。その際に行う挨拶の内容は簡潔で問題ありませんし、普段使わないような言葉も使う必要はないため、落ち着いてゆっくり話すことを心がけましょう。
お通夜式での挨拶の内容としては、
(1)ご弔問に対するお礼
(2)生前そして療養中の厚誼に対するお礼
(3)通夜振る舞いの席のご案内
(4)ご葬儀のご案内
をポイントに、お通夜式にご弔問していただいた方々に感謝の気持ちを込めて挨拶をしましょう。
なお、地域によってはお通夜式での挨拶を行わず、お通夜式の閉式時に司会がご葬儀・告別式の案内を行ったり、通夜振る舞い中に喪主がお酌をしながらご弔問者にお礼を述べたりします。
ご葬儀・告別式後の出棺時に喪主が挨拶を行う際は、位牌を持った喪主と共に、遺影を持ったご遺族が並んでいます。この時の挨拶はあまり長くならないよう、できるだけ簡潔に行いましょう。
(1)自己紹介(故人様との関係性を述べる)
(2)ご葬儀・告別式にご会葬いただいたことへのお礼
(3)故人様の最後の様子を軽く述べる
(4)生前のご厚誼へのお礼
(5)今後の指導のお願い
(6)結びのお礼
の順に話していきましょう。
なお、挨拶のタイミングについては、式の流れ・地域性などによって異なるほか、会場によって挨拶を行うタイミングも変わってきます。そのため、事前の打ち合わせの際に葬儀社の担当者に確認をしておきましょう。
火葬を執り行った後には、精進落とし(お斎)として食事を行います。このときも喪主が挨拶を行います。精進落とし(お斎)に参列していただいた方に対して、ご葬儀・告別式が無事に終わったことへの報告と感謝の言葉を述べましょう。また、お開きの挨拶では、お通夜式とご葬儀・告別式にご会葬いただいたことに改めて感謝の気持ちを述べるほか、今後も宜しくお願いしたい旨の気持ちや既に法事・法要の日時などが決まっているようであればご案内しましょう。
ご葬儀の各場面で挨拶を考える際には、気を付けるべき点がいくつかあります。以下では気を付ける点をまとめましたので、ぜひご参照ください。
喪主の挨拶では、およそ1~3分程度にまとめるようにしましょう。ご会葬いただいた方々に伝えたいことは様々あるとは思いますが、長々と話すようなことは避けるようにしましょう。
挨拶で話すお礼の文面は故人様との関係でそれほど変わりはありませんが、その他の内容は故人様との関係でエピソードが異なります。
例えば、喪主が夫・妻の場合には家庭での様子や父や母として果たしていた役割を述べた上で、遺された家族で支え合って生きていくことを表明しましょう。また、喪主が子の場合には父または母の人柄や思い出などを述べましょう。
忌み言葉とは、ご葬儀の際に使用することを避けるべき言葉になります。喪主の挨拶を考える際は注意して考えましょう。
【重ねことば】
重ね重ね(かさねがさね)/益々(ますます)/度々(たびたび)/重々(じゅうじゅう)/次々(つぎつぎ)/再三(さいさん)/いよいよ/くれぐれも/かえすがえす など
【繰り返しが連想されることば】
続く/引き続き/再び/再々/次に/なお/また/追って/追いかける など
【直接的な表現】
死亡/逝去/死ぬ/生きる/存命中/自殺 など
【不吉な表現】
浮かばれない/大変なことになる/消える など
日本でのご葬儀は多くの場合仏式で執り行われますが、神式やキリスト教式で執り行われることもあります。そのような場合、挨拶の言葉遣いも変えなくてはいけません。ご心配であれば、事前に葬儀社や菩提寺などに確認をしておくとよいでしょう。
【仏式の場合】
浮かばれない・迷う(成仏できないことを想起させる言葉)
【神式の場合】
冥福・成仏・供養・往生など
【キリスト教式の場合】
成仏・冥福・供養・往生など
本日はご多用の中、故人・○○の通夜式にご弔問くださいまして、心よりお礼申し上げます。故人もさぞかし喜んでいることと存じます。ささやかではございますが、別室にお食事の席を設けております。ご都合のよろしい方は、ぜひ故人の思い出話など、お聞かせ願えればと存じます。
なお、明日の葬儀は△△時より××で執り行う予定です。何卒よろしくお願い申し上げます。
本日は誠にありがとうございました。
本日はお忙しい中をわざわざお越しいただきました上に、ご丁寧にお供物まで頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。こうして、皆様方にお集まりいただきましたことを、亡き父もさぞかし喜んでいることと存じます。
また、父の入院中にはご親切なお見舞いをいただきましたことを故人に代わりまして、御礼申し上げます。
なお、明日の葬儀は△△時より××で執り行います。何卒よろしくお願い申し上げます。
別室にささやかな用意がございますので、どうぞ故人を偲ぶお話などをお聞かせいただきとうございます。
「乾杯」や「お開き」は祝宴の時に使用する表現になりますので、避けるようにしましょう。
皆様、お忙しいところ母のためにお時間をいただき、誠にありがとうございます。母もさぞ喜んでいることと存じます。
にぎやかなことの好きだった母ですので、あまりしめっぽくせずにお過ごしいただければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
通夜振る舞い開始時の挨拶と同様に、「乾杯」や「お開き」は祝宴の時に使用する表現になりますので、避けるようにしましょう。
皆様、本日は突然のことにもかかわりませず、祖父の通夜にご弔問してくださいまして、ありがとうございました。
故人もさぞかし喜んでいることでございましょう。故人にとって、これにまさる供養はないと存じます。
夜も更けてまいりましたので、このあたりで終了とさせていただきたいと存じます。本日は、誠にありがとうございました。
皆様、本日は誠にありがとうございました。
ごゆっくりお過ごしいただきたいところですが、明日のお勤めに差し支えるといけませんので、大変勝手ではございますが、このあたりで終了とさせていただきます。
なお、葬儀・告別式は、明日△△時より、この斎場で執り行いますので、ご都合がつきましたらご会葬いただけたらと存じます。
夜も更けてまいりました。どうぞお足元にお気をつけてお帰りください。
本日は、誠にありがとうございました。
遺族を代表して、皆様に一言ごあいさつを申し上げます。私、故人の妻の○○でございます。
本日はお忙しい中お悔やみいただきまして、誠にありがとうございます。故人も皆様方から見送りいただき、さぞかし喜んでいることと存じます。
夫は退職後、登山に水彩画にと、多くの趣味を楽しんでおりました。夫がこのように豊かな晩年を過ごせたのも、ひとえに皆さまのおかげでございます。
今後とも、私ども遺族に対しましても変わらぬご支援、ご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。
本日は、最後までお見送りいただき、誠にありがとうございました。
本日はご多忙の中、父・○○の葬儀にご会葬いただきまして、誠にありがとうございます。
父は、昨年の秋に倒れ、その後入院しておりましたが、3日前に容体が急変し、そのまま眠るように逝去いたしました。享年72歳でした。
息子としては父を失ったことがまだ信じられない思いでございますが、父は苦しい闘病生活から開放され、ほっとしているかと思います。
生前皆様からご厚誼を賜ったこと、故人に代わって厚く御礼申し上げますとともに、○○亡き後も変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。
本日は誠にありがとうございました。
本日は亡き○○の葬儀・告別式にお集まりくださいまして、誠にありがとうございました。
おかげさまで、滞りなく葬儀・告別式を済ませることができました。これもひとえに皆様のお力添えの賜物です。故人もさぞ感謝していることと存じます。あらためてお礼申し上げます。
ささやかではございますが、精進落としの用意をいたしましたので、どうぞごゆっくりお召し上がりください。
本日は、誠にありがとうございました。
本日は、お集まりいただきまして、誠にありがとうございました。
私どもの知らない父の姿を皆様より伺うことができ、感無量でございます。もっと故人の思い出話など伺いたいところではございますが、あまりお引き止めするのはご迷惑かとも存じますので、このあたりで終了とさせていただきます。なお、四十九日の法要は△月×日を予定しております。
足元暗くなっておりますので、どうぞお気をつけてお帰りください。
本日は、誠にありがとうございました。
喪主として挨拶をする時は緊張するものです。大切なのは、「お忙しい中で、ご弔問・ご会葬いただいたことへの感謝を伝えること」です。今回ご紹介した内容や文例をふまえて、無理に飾ることはせずに、ゆっくりとご自分の言葉で伝えるようにしましょう。
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