2020-08-20
仏式のご葬儀の際に、故人様に付けていただく名前のことを「戒名」と言います。戒名は位牌やお墓に記されますが、死後に名前を改めることにどのような意味があるのでしょうか。また、戒名は誰に依頼をすればよいのでしょうか。
そこで今回は、戒名の意味や戒名の付け方など、戒名に関する基本知識についてご紹介します。
仏式のご葬儀では、故人様は生前のお名前(俗名)ではなく、死後に付けていただく「戒名(かいみょう)」を使用します。ご葬儀では白木の位牌にその名を記して祭壇に置くことになります。
戒名は本来、仏教の戒律を守り、仏の教えに従って生きていく方のみが生前に授かることができました。しかし現在では、仏式のご葬儀において、出家されているか・いないかにかかわらず、死後に戒名を授かることが一般的となりました。
なお、同じ仏教でも宗派によっては「戒名」という言葉は使われず、浄土真宗では「法名」、日蓮宗では「法号」が授けられます。これは、それぞれの宗派によって教えや考え方が異なるためです。
戒名は日本人にとって馴染みのある「名字+名前」とは構成とは全く異なり、いくつかの要素で構成されています。位牌の中には見慣れない漢字も使用されているため、一目見ただけではどうなっているのか分からない方もいらっしゃると思います。そこで以下では戒名がどのような構成になっているかをまとめさせていただきます。
院殿号(いんでんごう)・院号(いんごう)は、戒名の一番上に付けるものになります。院殿号・院号は共に戒名としては最上位にあたります。それ故に、院殿号・院号が付いている戒名は、信仰心が深く寺院への寄与が高い、もしくは社会的貢献度が高い方に付けられます。
道号は、本来の「戒名」のすぐ上に付き、徳の高い方や仏教の教えを得た方に付けられます。一般的には、故人様を表したり称えたりする文字が選ばれます(例:雅号・家名・俗名など)。ただし、子どもには与えられず、宗派によっては道号が存在しない場合もあります。
道号の下に付く2文字が、本来「戒名」と呼ばれるものです。戒名は、故人様の俗名にちなんだ文字を入れたり、経典から文字を取ったりするなどして付けられますが、身分による違いはなく、どんな方でも2文字となります。
位号は、戒名の一番下に付けられる「様」のような尊称になります。男性であれば「居士(こじ)・信士(しんじ)」、女性であれば「大姉(だいし)・信女(しんにょ)」など、性別や年齢だけでなく、信仰の篤さや社会貢献性によっても異なった位号が使用されます。
戒名は、菩提寺をお持ちの方は菩提寺の僧侶に付けていただきますが、故人様が亡くなられてから遅くともご葬儀までに戒名を付けていただきます。ただし、菩提寺が遠隔地にある場合などは、ご葬儀を俗名で執り行い、納骨の際に戒名を付けていただくこともあります。
なお、菩提寺をお持ちでない方は葬儀社から紹介されたお寺で戒名を付けていただきます。しかし、納骨先が別のお寺の墓地になる場合は、そのお寺から戒名を付けていただくことになります。
戒名を付けていただくには「戒名料」が必要になります。戒名料を支払うタイミングは、ご葬儀が始まる前に行う挨拶の際がよいでしょう。会葬者対応などで忙しくて時間を取るのが難しいようであれば、ご葬儀後でも問題ありませんが、ご葬儀の形式やお寺ごとの考え方によってタイミングが異なることがありますので、事前にタイミングを確認しておくとよいでしょう。
なお、戒名料をお渡しする際は、直接手渡してはいけません。戒名料が入った袋を袱紗で包み、切手盆と呼ばれるお盆に乗せて差し出すのがマナーになります。
戒名は基本的に亡くなられた後に付けていただきますが、ご存命であっても付けることができますが、これを「生前戒名」と言います。
生前戒名は、ご自身が納得する名前を付けてもらいやすく、宗派によっては「生前から仏の道に入られるのはとても尊いことだ」とされています。また、僧侶とご本人がやり取りすることで、納得がいかない戒名になってしまうことなどのトラブルの回避にもつながります。
ただし、生前戒名を付けていただく際には、納骨予定の菩提寺に付けていただくか、菩提寺に確認をしなければいけません。これは、菩提寺以外でご葬儀や戒名付けなどを行ってしまうと納骨を断られてしまうことがあるからです。そのため、生前戒名を付けていただいた場合はあらかじめご自身の菩提寺に確認をした上で、しっかりと相談をしましょう。
また、生前戒名を付けていただいた場合はご家族にも説明をしましょう。せっかく生前戒名を付けていただいてもご葬儀を執り行われるご家族がそのことを把握できていないと亡くなられた後に再び戒名付けを行ってしまうかもしれません。
戒名の構成やマナーなど、戒名に関する基礎知識を備えておけば、ご自身だけでなく、遺されるご家族にとってもいざという時に負担や焦りが少なくなるでしょう。可能であれば、生前のうちに菩提寺と相談したり、葬儀社の方に間に入っていただくなどして、無理なく戒名を付けていただけるでしょう。
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